今回はまつ毛が特徴的な壁チョロヤモリである『クレステッドゲッコー』をご紹介します。
『地表棲のレオパ』『樹上棲のクレス』とペットゲッコーの人気2トップとして君臨し、初心者向けヤモリの代表格的な存在です。
飼育方法も特に難しいポイントは無く、初心者の方でもスムーズに飼育に入ることができるでしょう。この記事ではクレステッドゲッコーの基本的な生態と、飼育方法について書いていきますので、何かの参考になれば幸いです。
クレステッドゲッコーの生態
クレステッドゲッコーの基本情報
和名:オウカンミカドヤモリ
分類:ヤモリ科イシヤモリ亜科
分布:ニューカレドニア
全長:20cm
食性:雑食性(動物食が強め)
繁殖:卵生
今でこそ繁殖方法が確立され、非常に多くのクレステッドゲッコーを見ることができますが、かつては幻のヤモリとして扱われていました。
というのも1866年に新種として記載されたのち、数匹の発見例があった以降100年近くに渡って存在が確認されず、絶滅してしまったと考えられていました。
1994年にクレステッドゲッコーが再び発見され、研究用として繁殖された個体が徐々に日本に入って来るようになりました。飼育方法も確立されておらず、希少性が高い種類だったこともあって、数百万円という高価な値段で取引がされていました。
その後徐々に飼育方法が明らかになってくると、思った以上に飼育が容易であることが分かり、繁殖も決して難しくないということもあって市場にCB個体が多く流通するようになりました。
市場に多くのクレステッドゲッコーが流通することで値段も徐々に落ち着き、初心者でも手が届きやすいという現在の相場になっていきました。
ブリーダー達の努力によりモルフが豊富に作出され、現在においては多くのバリエーションの色を持ったクレステッドゲッコーを確認することができます。
クレステッドゲッコーのモルフ
クレステッドゲッコーは多くのモルフが作出されており、それぞれ非常に特徴的な色やパターンを持っています。ここでは流通量が多く、よく見られるモルフについてごく一部ですがご紹介いたします。
パターンレス
パターンレスとは基本的に単色であり、特徴的な模様が存在しないモルフとなります。
その中でも色が複数別れており、レッドだったりイエローだったりオレンジが強い個体が確認されています。
フレイム(Flame)
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ファイア(Fire)とも呼ばれます。脇腹に模様が入っているものがファイアと思われがちですが、実際には背中にあるストライプが入ることを指します。
このフレイムの発展形にハーレクインというモルフが存在します。
ハーレクイン
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フレイムに見られる背中のストライプに加え、脇腹部分と手足にパターンが現れるのがハーレクインの特徴となります。
手足の発現が重要とされ、脇腹部分のみにパターンが発現するとフレイムという扱いになるようでです。
ダルメシアン
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犬でおなじみのダルメシアンのように体表に黒いスポットが出現するモルフ。
スポットは大きさも色もまばらで、遺伝については未だに検証が続いています。
スポットが100を超えるものをスーパーダルメシアンと呼びます。
性格と値段
壁チョロヤモリの中では性格が温厚でおとなしく、人にもよく慣れる爬虫類です。
WC個体が出回ることはほぼなく、CB個体の流通がほぼすべてなので性格は大人しい個体が多い印象です。
値段に関してはヒョウモントカゲモドキのようにモルフによって大きく変わってきます。流通量の多いモルフやノーマルは2~3万円ほどで、希少性の高いモルフは必然的に高価になりやすいです。
また成長具合によっても値段が変わってきます。少しでも値段を押さえたい場合は少々デリケートな飼育になりますが、ベビーの個体を選ぶと良いでしょう。
クレステッドゲッコーの飼育方法
トカゲの飼育などに比べると、ライト類がほぼ必要なく省スペースで飼育できるので設備コストは低めです。
ケージ
ヤモリに関してはケージ全体で活動することができるので、地表棲のトカゲなどに比べるとケージの大きさは省スペースで済みます。
ヤモリの飼育には高さが重要になってきますので、横幅よりも高さを重視してケージを用意しましょう。最終的には幅30cm×奥行30cm×高さ45cmのケージで終生飼育できます。少し手狭に感じますが、高さ30cm程度のグラステラリウムナノでも十分飼育は可能です。
あまりに狭いケージで飼育を行うと、身体や尾が曲がってしまうことが有るので、なるべくクレステッドゲッコーの全長以上の高さを確保したいところです。
床材
湿度を要求する爬虫類ですので、床材にはなるべく保湿力の高いものを選びましょう。
オススメするのはヤシガラマットか水苔です。ヤシガラのみで湿度が上がらないようならば水苔を少量混ぜて使っても良いでしょう。
メンテナンスを重視するのであればキッチンペーパーやペットシーツでも構いません。
その場合は湿度を保つために霧吹きを多めに行うか、加湿器などを使って湿度を確保しましょう。
シェルター
無くても特に問題はありませんが、隠れること自体は好きなのでシェルターを使わない場合はレイアウトで植物などを使って隠れられる場所を作ってあげると良いでしょう。
自然風にレイアウトを行うと勝手に居心地が良いところに居ますのでそこまで気にする必要はありません。
水入れ
クレステッドゲッコーは水入れから中々水を飲んでくれないことが多いです。
飲水に関しては霧吹きなどで壁面から摂取することが多いです。
稀にですが水入れから飲む個体もいるようなので、念の為設置しておくと良いかもしれません。(飲まなくても乾燥防止にはなります)
ライト類
クレステッドゲッコーは夜行性のヤモリですので、紫外線ライトなどは基本必要ありません。
ある程度の紫外線は必要という意見もありますが、紫外線を当てないで問題になったケースをあまり見かけることも有りません。
もし紫外線ライトを導入する場合は弱めのものを使ってあげると良いでしょう。
止り木など
趾下薄板を使って器用に壁に登ったり、枝に止まったりするので、流木などでレイアウトしてあげましょう。
大きめの流木やコルクを中央にドンと設置しても良いですし、ジャングルバインと呼ばれるグネグネと自在に曲げられる人工蔦を使って複雑な構成にしても面白いです。
エサ入れ
飼育者の方がピンセットなどで給餌をするのならば特に必要ありませんが、置き餌などを用いる場合には用意すると良いでしょう。
最近は人工フード用に壁に磁石で固定できるエサ皿が登場し、見栄えも良いのでオススメです。
温度と湿度管理 ヒーター類
温度に関しては寒すぎず熱すぎないように管理することが望ましいです。
理想としては26~28℃あたりで温度をキープしたいところです。寒さにはそれなりに強さを見せますが、高温にはあまり強くないので夏場はクーラーなどで管理すると楽です。
基本的な保温はケージの側面にパネルヒーターを設置するだけで事足りますが、冬場にケージ内温度が下がってきているようならば暖突などで温度を底上げしてあげましょう。先程も述べましたが、温度が上がりすぎるとクレステッドゲッコーにとって辛い環境になりますのでサーモスタッドで管理することも忘れずに。
湿度はおおむね50~70%を保つように管理をすると良いでしょう。クレステッドゲッコーは湿度管理が重要とされていますが、基本的に高湿度で乾燥させないことを意識すれば大丈夫です。
1日に朝夜の2回に分けて霧吹きでケージ全体を濡らしてあげます。壁面についた水は湿度を確保するのと同時にクレステッドゲッコーの飲水にもなりますので、霧吹きはかなり重要な作業になります。
床材に保湿性が高いものを選んだり、ケージ内にポトスのような鉢植えを用意してあげると高湿度を比較的簡単にキープすることができます。
日々の管理がしやすいように温湿度計は必ず用意しておきましょう。
エサや給餌方法など
コオロギやローチといった昆虫系のエサも食べますが、レパシーからスーパーフードクレステッドゲッコーという非常に優秀な人工餌が販売されており、ほぼこの人工餌のみで終生飼育することができます。
最近はキョーリンからクレスゾルと呼ばれる新しいタイプの人工餌も登場したので、好みによって使い分けても良いでしょう。
すでに人工餌に慣れている個体をお迎えすれば問題ありませんが、人工餌に慣れていないベビーは餌付けが少し大変です。念の為に小型の冷凍コオロギなどを用意してあげると良いでしょう。冷凍コオロギなどに少し人工餌をまとわせて給餌すると徐々に人工餌に慣れてきてくれます。
ベビーは毎日食べる分だけ与えて構いません。アダルトになってからは2~3日に1回ほどに抑え、肥満にならない程度に与えていきます。肥満は突然死を招く原因になりがちなので、与えすぎには注意しましょう。
ハンドリング
壁チョロヤモリながらおっとりしているのでハンドリングは容易な方になります。
ただし、クレステッドゲッコーは一度尻尾を自切すると二度と生えてくることはありません。なるべくストレスを掛けないように触れ合っていきましょう。
また、ヤモリらしく急にピョンと遠くへ飛んでいくこともあるので、低い場所で飛んでいっても身体を傷めないようにハンドリングをすることをオススメします。
飼育において気をつけること
湿度不足などが原因で起こる脱皮不全には気をつけましょう。
特にヤモリにとって重要な趾下薄板で脱皮不全が起こってしまうと、上手に壁や木に登れなくなり、地面から動けなくなってしまいます。
日々の湿度管理と毎日の観察で脱皮不全に関しては未然に防ぐことができますので注意しましょう。
さいごに
クレステッドゲッコーの飼育についていくつかポイントをまとめてみます。
設備コストは低め
温度は寒すぎず暑すぎず
湿度管理は高めにキープ
エサはほぼ人工餌でOK!
ハンドリングは簡単
飼育者も多く、飼育本なども豊富に出版されているので初めてヤモリを飼育するという人にはピッタリの爬虫類だと思います。
少し温度と湿度に気を使う必要がありますが、他の爬虫類と比べると簡単な方になります。
特に人工餌のみで飼育できるというポイントは大きく、虫が苦手な人でも安心して飼育ができるのではないでしょうか。
以上、クレステッドゲッコーの生態と飼育方法でした。
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